大阪高等裁判所 平成8年(ラ)327号 決定 1998年6月05日
抗告人 本上彰
相手方 本上勇
被相続人 本上勝正
本上勢子
主文
一 原審判を次のとおり変更する。
被相続人本上勝正及び被相続人本上勢子の遺産を次のとおり分割する。
1 別紙遺産目録1記載の不動産を相手方本上勇の単独取得とする。
2 抗告人本上彰は、相手方本上勇に対し、遺産分割を原因として
(1) 同目録1(1)記載の土地につき持分6分の2
(2) 同目録1(2)記載の土地につき持分21分の1
(3) 同目録1(3)記載の建物につき持分6分の2
の各割合による持分移転登記手続をせよ。
3 相手方本上勇は、抗告人本上彰に対し、代償金として1194万7403円を支払え。
二 抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1 本件抗告の趣旨は、「原審判を取り消し、本件を大阪家庭裁判所に差し戻す。」との裁判を求めるというものである。
第2 当裁判所の判断
1 当裁判所も、被相続人本上勝正及び被相続人本上勢子の各遺産は原審判の理由で認定判断したとおり(但し、代償金の相殺に関する部分を除く)分割するのが相当であると判断する。
その理由は、次に付加・訂正する他は、原審判の理由に示されているとおりである。
(1) 原審判3枚目表10行目及び同裏初行の各「地下」を「地価」に、同4枚目裏3行目「相殺」を「求償債権などの処理」に、同5枚目表2行目の「費用償還請求権」を「求償債権」に各改める。
(2) 同5枚目表5行目「なお、」から同表未行までを削除する。
原審における抗告人の主張に鑑み、本件記録を検討しても、同主張を採用すべき事由は見出せず、本件抗告は理由がない。
2 職権をもって判断するに、遺産分割に伴う代償金の債権債務は本来遺産分割審判の確定によって初めて形成されるものであるから、上記予備的相殺の意思表示も本件遺産分割審判の確定を条件とするものである。したがって、上記相殺の意思表示は本件遺産分割審判が確定するまでは効力を生じることはなく、その効力がすでに発生したことを前提に遺産分割審判中で相手方の代償金債務と上記求償債権(抗告人の債務)とを対当額で相殺したものと扱い、代償金債務を遺産分割審判の主文で判断しないことは許されない。
よって、本決定主文に本件遺産分割に件う代償金債務の額を明記することとする。
なお、本件遺産分割審判が確定したときは、同審判主文で判断された相手方の代償金債務が発生したことに確定し、その確定と同時に上記予備的相殺の意思表示により直ちにその代償金債務と上記求償債権(抗告人の債務)とが対当額で消滅する効果が発生するから、相手方は、抗告人に対し、現実に代償金債務の履行を要するものではない。
3 よって、原審判を職権で変更することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 川神裕)
(別紙)
遺産目録
1 不動産
(1) 所在 大阪市○○区○△×丁日
地番 ×××番の8
地目 宅地
地積 61.58平方メートル
(2) 所在 大阪市○○区○△×丁目
地番 ×××番12
地目 宅地
地積 18.06平方メートル(持分7分の1)
(3) (一棟の建物の表示)
所在 大阪市○○区○△×丁目×××番地7、×××番地8
家屋番号 ×××-7、×××-8
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 84.87平方メートル
2階 32.00平方メートル
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○△×丁目×××番の8
種類 店舗居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階41.86平方メートル
2階32.00平方メートル
2 預貯金(申立人受領済)
(1) △△信用金庫△○支店普通預金口座番号×××942
金額(相続開始時の残高) 3万6226円
(2) △△信用金庫△○支店定期預金口座番号×××942
金額(相続開始時の残高) 212万1600円
(3) 郵便貯金記号番号×××××・××××961
金額(相続開始時の残高) 18万9942円
(4) ○銀行△○支店普通預金口座番号××××336
金額(相続開始時の残高) △23万0547円
(5) ○銀行△○支店定期預金口座番号××××336
金額(相続開始時の残高) 80万円
3 預貯金、現金(相手方及び本上隆が2分の1宛受領済)
(1) 定額郵便貯金証書記号番号×××××・×××196
金額(相続開始時の残高) 10万円
(2) 定額郵便貯金証書記号番号×××××・×××386
金額(相続開始時の残高) 10万円
(3) 定額郵便貯金証書記号番号×××××・×××074
金額(相続開始時の残高) 100万円
(4) 郵便貯金総合通帳記号番号××××××・××××681
金額(相続開始時の残高) 42万7224円
(5) △△信用金庫△○支店普通預金通帳口座番号×××892
金額(相続開始時の残高) 9853万円
(6) 現金金額(相続開始時の残高) 40万8947万円
以上